第20回寺子屋サルーン「自立に悩む若者と保護犬の再出発」を開催しました(令和元年10月20日)

10月20日(日)交流サルーンいばらきにて,第20回寺子屋サルーン「自立に悩む若者と保護犬の再出発」を開催しました。講師は,NPO法人キドックスの代表理事をつとめる上山琴美さんです。

 

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NPO法人キドックスとは,保護犬の譲渡活動やカフェの運営などを通じ,引きこもりや不登校などの悩みを抱える若者の自立を支援している団体です。

その活動は多岐にわたり,譲渡に出せるよう1対1の担当制で行う保護犬のトレーニング,保護犬と出会えるカフェの運営や提供フードの調理,フードに使う果物の栽培,販売グッズの制作,施設の修繕や広報などを,本人の希望や適性を踏まえて若者が行っています。

ここでの活動目標は,「保護犬の里親家族を見つけ,幸せに暮らせるようにすること。」とされています。何らかの失敗や挫折を経験し,社会や人に対して不信感を抱き,自信を無くしている若者は,「社会に復帰する」「コミュニケーション能力を身につける」といった当人の目標に対して抵抗感や恐怖心を抱き,辛くなってしまう場合があります。ですが,「保護犬のため」という目標であれば,受け入れやすくなるそうです。

 

若者たちは,キドックスで成功体験や達成感を得ることで,少しずつ自信を取り戻し,様々な課題を乗り越えていきます。そのために,若者一人ひとりの性格や問題と丁寧に向き合い,敢えてトレーニングが難しい保護犬を担当させたり,スタッフと対等な関係として意見交換をしたりしています。

 決して楽な道程ではなく,自立までに数年を費やす方もいるそうですが,保護犬のための日々の小さな努力が結果に繋がっているという事例をご紹介いただきました。

 

この日は,上山さんの愛犬で元保護犬でもあるキャバリアのでこぽんちゃんにも来ていただきました。

「ハウス」「おすわり」「ふせ」「待て」など,普段若者が行っているトレーニングの一部を見せていただき,初対面である参加者の方の指示もしっかりと聞いていました。

  

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家庭で暮らすために必要な訓練が沢山あります

 

ワークの時間には,引きこもりや不登校などの悩みを抱える若者と保護犬について参加者自身が考え,グループで意見を出し合いました。

意外にも,今回参加された方々はそのような若者や野良犬を見かけたり,身近で話を聞いたりといった経験が少ないようでした。ですが,実際にそのような若者や野良犬に出会った場合にどうするかというテーマについて,皆さん真剣に考えてくださいました。

 

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ワークの様子

 

まず,引きこもりや不登校などの悩みを抱える若者については,家族の力だけでは解決し難いそうです。何に悩んでいるのか,何を辛いと感じているのか,家庭環境や学校・職場環境はどうかなど,個々人によって状況は様々です。また,進学や就職が進むべき道とは限らず,その人にとっての幸せな自立の形も多様です。一概にこうすべきという方法はないため,支援をすることも簡単ではありません。ですが,家族ではない第三者とのコミュニケーションが一歩を踏み出すきっかけとなることも多く,まずは相談すること,話を聞くことが良いとのことでした。

県の精神保健福祉センターをはじめ,市やNPOでも相談窓口を設けており,相談内容に沿った適切な機関を紹介してくれる場合が多いため,まずはどこか相談窓口を利用すると良いそうです。

 

野良犬についても同様で,相談窓口へ連絡することが大切だそうです。

県の動物指導センターをはじめとする相談窓口では,迷い犬を見つけた際の対応についても相談に乗っていただけるうえ,この連絡から即殺処分となることはないそうです。

犬を保護・譲渡するには,お金・時間・環境などの大きな負担と責任が伴います。県内の保護団体やセンターはすでに限界まで動物を保護しており,新たな引き受けは難しいのが現状です。かわいそうだからと安易に保護し,センターや保護団体に引き取ってもらおうという行動は適切ではなく,自力で保護ができない場合は放っておくか,自身のキャパシティを説明したうえで相談するということも,大事な選択だというお話しがありました。

  

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沢山の質問が挙がりました

 

引きこもりや不登校となる若者,保護犬,どちらも一朝一夕には解決できない問題を抱えており,根気強い活動や支援を必要としています。

一方で,少しずつではありますが,精神的な病や保護犬に対する理解の深まりを感じることもあり,犬猫殺処分数も減少しています。

まずは関心を持つこと,知ることが,共助・共生の地域づくりへの第一歩だと感じる時間でした。

 

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次回の寺子屋サルーンは,令和2年1月25日(土),元城里町地域おこし協力隊でイノシシ革のお店サングリエをオープンした瀬川礼江さんをお招きする予定です。

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